Terminalより抜粋
xxxの日記
2*&#年 02月 %$日
学の無い私が、これまでに起きた出来事を書くには少々骨が折れる。
結論だけ書けば──高級な腕時計が私のものになり、今の時点で何とか使えるまでにはなったということだ。
そして、写真というものが撮れるようになったということ。
ファインダー越しに見た故郷は、今まで私が見たことの無い色に染まっていて最初は驚いた。それは儚くも美しく、Vaultという閉ざされた穴蔵から再建の為に這い出してきた人達には悪いのだけど……緩やかな滅びの過程を辿ってゆく世界とは、綺麗なものだと感じてしまった。
私を育ててくれた人は、古き良きアメリカにしがみつき、曇った目が澄むこと無く命を終えた。私にこの高級腕時計を託した人は、アパラチアの食物連鎖の頂点に君臨する王の爪に切り裂かれた。
アメリカ万歳、今やアパラチアのアンクル・サムは空を好き勝手に飛び回り、共産主義者だろうが愛国精神溢れる者だろうがお構い無しに裁きの鉄槌を下す。
そんな世界に生まれ落ちた私が、空に抱く感情は畏怖だけかと思っていたが……どうやら、今は違うようだ。
アメリカ万歳。
再建の日までか私の命が尽きるまでかは分からないけれど、私はシャッターを切り続けよう。
この世界をカメラに収める喜びを知った、私だけの景色を私だけの小さな宝箱に収め続けよう。