Terminal of a xxx…

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グールと墓石

 

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 積灰の山は有害物質や灰と同様、禍根が未だに降り注いでは積もる地だと思う。

 

 

 

 かの地を歩いている時に、以前助けたマザー・ロードと再会した。彼女は元気そうで良かった。『元気そうで』と書けば語弊があるかもしれないが、人付き合いを全くしたことがない私からすれば、機械も人も平等に見えるのだから仕方が無い。

 仕事を頼まれ、一通り掃除を手伝った後に彼女が採掘した鉱石を受取り、別れた。

 こうしてマザー・ロードは人が消えた今も採掘を続け、時折訪れる生存者に恩恵をもたらすのだろう。

 

 昔に起こったホーンライト・インダストリアルとガラハン鉱業の確執などは、私も彼女も知る由も無い。

 ストライクブレイカー達においては、私達生存者とかつての労働者を見分ける術すら持たない始末だ。一方こちら側も爆弾が落ちる前の社会情勢なんて知ったところで、手心を加えるわけでも加えられるわけでも無い。

 

 争いを避ける手段として大切なのは──相互理解よりも、利害の一致なのだと思う。

 

 らしくない事を考えながら無人の街を歩き、気付けば外れの墓地にまで足が伸びていた。

 墓場という場所は、たまに使えそうなものが死者と共に埋まっているから好きだ。巣食う虫は嫌いだけど──そいつらを潰して嫌な気分になるよりも、大きな見返りとキャップが待っている。

 そんな話を以前おじさんに話したら、酷く困った顔をされた。どうやらVault住民には理解されない価値観らしい。この人達はそんなお上品な価値観で、アパラチアを生き延びれるのかは甚だ疑問ではある。

 

 石造りの階段を音を立てずに登り、聴覚に神経を集中させる。吹き荒れる風音に混じって僅かに捉えたのは、軽いながらも均等な足音。多分ヒトでは無くなった者だろう。

 予想通り、階段を登りきった先にそれは居た。

 フェラルグールは動きも素早く、人の気配を察知する能力にも長けている。おまけに脳が放射能で腐ったせいか、普通の人間よりも力が強く、スーパーミュータント共とは違った恐ろしさを持っている。

 向こうが私の姿を捉えるよりも先に、仕留めなければ厄介だ。そんな事は知っていたが……頭が一瞬、身体を動かすことを制止した。

 有害物質で濁った空気は重く、逆に太陽を覆う光景は夕陽に似た美しさがある。そこに連なる墓石の前に立つフェラルは一瞬だけ、かつての姿のままに見えた。

 

 何もかもが汚染され尽くしたアパラチアにおいては躊躇いこそが油断となり、命取りにもなる。そんな事は百も承知だ。

 幸いにも相手は私の姿に気付いてなかったからこそ生き延びて、今これを書くに至っているが、あの時の躊躇いは私自身が一番信じられない出来事だった。

 

 

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